「 要素価格均等化定理 」 とは、「 各国が自由に貿易を行った場合、生産財の価格を決定する要素となる地価や労働者の賃金なども、国際価格に均等化していく 」 というものです。賃金が相対的に割高な日本では、賃金をそうそう上げることができないということです。
"キャニオンスプリングスレッドライオンモーテルツインフォールズアイダホ"
この考え方を地価にあてはめ、要素価格均等化定理が働くとすれば、それは日本の地価にとって大きな下落圧力だということが容易に予測できるでしょう。むろん、都心部の超一等地など、金融商品化できる立地、グローバルマネーが流入できる立地は別です。
また、景気が後退局面に突入しているにもかかわらず、原油や食料品、ガスや電気料金など、私達の生活必需的なコストはどんどん上昇しています。景気後退と物価上昇が同時に訪れるスタグフレーション的な状況が、いまのわが国の経済状況です。そうなると、生活コストの大部分を占める 「 賃料 」 には、おのずと抑制される力が働きます。
ホースシュー滝スコッツデール、アリゾナ州
そもそも日本は、一般的な国民が住宅を取得する際の総額が、国民の所得に対してあまりにも高すぎます。また土地建物の価格比率のうち、土地価格の比率が高すぎることなどは、今後のグローバル化の流れの中で修正 ・ 調整されていくことになるでしょう。経済のグローバル化による要素価格均等化定理や、景気後退と物価上昇の影響を受けて、日本の地価は徐々に下落をしていくことになると、私は予測しています。
地価が下落するということはメリットとデメリットの両方の側面があります。生活コストとしての賃料が下がったり、マイホームの購入価格が下がるということは、賃貸住人やこれからマイホームを買う人にとってプラスです。生活コストが余りに高すぎる国は、決して暮らしやすい国だとはいえないでしょう。国民の幸福感は、所得に占める生活コストによるところが大きいのです。
峡谷が低下
一方で、不動産を担保にお金を借りている企業や、貸している金融機関にとっては大きなマイナス。また、個人の不動産投資家やマイホームを所有している方など、すでに不動産を所有している人にとってはマイナスです。
ゆえに、地価がただ単純に下がってしまっては、日本経済は沈下するだけです。沈下以外の要素がないからです。土地を担保にお金を貸したり、借りたりすることができず、経済も停滞しますし、国民の資産も目減りします。
そこで国が目をつけているのが 「 建物 」 なのです。地価が下落していくのは明白。ならば 「 建物 」 に価値を持たせるしかないのです。「 土地本位制資本主義経済 」 から脱却して、「 建物 」 が主役の時代、「 利用価値の時代 」 へと、日本の不動産は進んでいくのです。
また、建物に価値を持たせると同時に、中古住宅が安心して売買ができる状況を作ることで、中古住宅の流通を促進しようというのが、国の狙いです。では国は具体的に、日本人と不動産の関係をどうしようとしているのか。次回はそのビジョンと今後の動きについて、またそれを受けて私達はどうすればいいのかについてお話します。
2008年9月24日掲載
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